目がつねに最優先

調節できるモニターアームが重要な理由

A side view of a woman standing and typing at an adjustable-height desk. Another desk with a chair and adjustable monitor is in the foreground.

重要なポイント

  • 固定席からフリーアドレスに移行するオフィスが増えています。
  • フリーアドレスで社員が健康的に働けるようにするには、ツールやオフィス家具が調節できることが必要です。
  • モニターが適切な位置(個人によって異なる)にないと、ユーザーは、目とモニターの適切な距離を保とうとして、健康的ではない姿勢をとらざるをえません。

このような状況も起こり得ます。その日は、マネジャーのその上の上司に重要なプレゼンテーションをする日でした。ローレンは、太陽が昇り始める頃に本社に到着し、フリーアドレスの窓際のワークステーションを確保しました。ローレンは、自然の風景が脳によい(注1)  ことを知っており、その席を押さえることができ、ミーティングへの意気込みを高めることができました。

持参したラップトップを外部モニターに接続し、プレゼン資料の最後の仕上げに取りかかりました。モニターは大きいものの、標準の位置に固定されていて、その位置は(ユーザーは千差万別であるため)すべてのユーザーにフィットするわけではありません。ローレンは身長158センチ。遠近両用メガネをかけていて、頭をある角度に傾けると、テキストに焦点を合わせることができました。

午前8時半になり、窓から太陽の光が差し込み始め、画面が反射して見づらくなってきました。モニターを動かすことはできないため、自分の体を動かして日差しを遮りました。ミーティングの時間を迎えようとする頃、ローレンの肩は凝り、頭痛がし始め、その痛みでプレゼンテーションは辛いものになってしまいました。

固定席からフリーアドレスへの移行

ローレンの場合のように、個人に席を割り当てないフリーアドレスが増えてきています。企業や組織は、固定席が使われていない時間に注目し始めています。ハーマンミラーの調査では、固定席を割り当てられた人がそこを使用している時間は全時間の60%以下です。(注2)

企業や組織が設計パートナーと新しい働き方に対応したスペースを検討する際に使用するパターンは6つあり、固定席からフリーアドレスへの移行はそのうちの一つです。一般的なフロアプランでは97%が固定席のワークステーションですが、ハーマンミラーの先進的なお客様のフロアプランでは、41%がフリーアドレスのワークステーションです。(注3) 小グループのコラボレーションなどの機会が多いために、フリースペースを設けている企業も数多く存在します。

アジア太平洋地域の多国籍企業を対象にした調査によると、45%の企業が「2020年までに共有デスク制を導入する予定」と回答し、2017年の30%から増加しています。(注4) 南北アメリカの企業を対象にした調査では、51%が「2020年までに中規模または大規模な共有ワークプレイスへの移行を計画している」と回答し、2016年の37%から増加しています。(注5)

フリーアドレスは社員の健康にも影響を与える

不動産の有効活用は収益に直結します。実際に多くの組織にとって、設備投資は2番目に大きな営業経費にあたります。そしてまた、フリーアドレスに移行することも、社員(組織の最大の営業経費)とその健康に直結します。個人に割り当てたワークステーションは、その一人のユーザーに合わせることができます。一方、共有のワークステーションは、複数のユーザーに対応しなければなりません。ある利用者に完璧にフィットする環境が、次の利用者にはフィットしない、あるいは健康的ではないということが起こり得ます。

さらにもう一つ複雑な要素があります。一つのワークステーションを複数のユーザーの好みに同時に合わせなければならない場合もあります。ある調査によると、企業の53%がワークプレイス戦略のトップ3の一つに「コラボレーションの促進」をあげており(注6)、ハーマンミラーの一次調査によると、コラボレーションの70%は、会議スペースではなくワークステーションで行われていることがわかっています。(注7) さらに、固定モニターはコラボレーションを最適にサポートできていません。チームのメンバーは、画面を見ようとして、腰をかがめたり、身を乗り出したり、モニターの上から覗き込んだりしています。

社員が自分で調節できるようにすることで、健康や快適さを高められる方法はいくつもあります。タスクライトや、人間工学に基づくチェアもそうですが、仕事中の習慣的な動作を より快適で(注8)、健康的で(注9)、生産的(注10)に変えられる機能や自由なども含まれます。

調節可能なモニターは、フリーアドレスのワークステーションを利用するユーザーがモニターを自分に合う位置に移動できるため、これも仕事をより自然に行えるようにするための方法の一つなのです。

固定モニターが(多くの)ユーザーに快適ではない理由

ユーザーのモニターの見やすさに影響する要素は2つあります。「座った姿勢での目の高さ」と、「モニターと目の距離」です。座った姿勢での目の高さは、米国の成人で約28cmもの開きがあります(厳密に言うと、女性の5パーセンタイル値から男性の95パーセンタイル値の着座時の目の高さの差)。つまり、標準的なデスクに置かれている調節機能の限られた標準的なモニター(通常上下に少し動き、少し傾く)にフィットする人はほんの少数で、大半の人には最大で約28cmもフィットしないのです。

上下昇降デスクを使用する場合、もう一つ別の要素が加わります。人は立ち上がると背骨のカーブが変わります。つまり、立っているときと座っているときとでは、肩から腰までの距離が異なるため、モニターの適切な位置も変わってきます。ある研究によると、人は立っているときは座っているときよりも、モニターが(作業面に対し)約5センチ高い位置にあることを好むとされています。(注11)

Adjustable monitor arms allow a user to maintain a comfortable viewing position whether sitting upright or reclined.

モニターを自由に調節できるとき、ユーザーが選ぶ目とモニターの距離は約50cmから約100cmで、大きな開きがあります。これは、視力は人によって異なり、画面との距離の好みも人それぞれだからです。

モニターの高さの決定要因の一つに、個人の好みもあります。ほとんどのユーザーにとって最適な高さは、目の高さよりも少し下であることが分かっています。やや見下ろし気味に画面を見るのは自然であり、通常、耳の上部と目を結ぶ線が基準になります。遠近両用のメガネをかけている人は、かけていない人よりも、モニターが少し低い位置にある方を好みます。

一般的な遠近両用メガネをかけている人の場合、メガネをかけていない25歳の同僚よりも、スクリーンの位置が15度から20度低い方を好みます。モニターが「標準」の位置にあって動かせない場合、ユーザーはあごを少し持ち上げて、メガネの下側を通してスクリーンを見るようになります。そして、ローレンのように、首、肩、背中が凝り、頭痛を引き起こすことになってしまうのです。

モニターと目の距離は、モニターの高さ以上に重要かもしれません。モニターを自由に調節できるとき、ユーザーが選ぶ目とモニターの距離は約50cmから約100cmで、大きな開きがあります。(注12)  さらに、モニターと目の望ましい距離は、年齢によっても変化します。視界の明瞭さ(視力)と光の量の調節能力は、70歳の人は20歳の人より10倍低いことが分かっています。(注13)  眼鏡をかけても、視力は30%以上低下します。

目とモニターの快適な距離は、一日を通しても変化します。若年層のユーザーでも、近方作業によって眼精疲労を感じますが、それは目とモニターの距離を調節することで改善することがあります。(注14)

このような理由から、すべてのユーザーに理想的なモニターの高さや距離は存在しません。モニターの位置を調節できないと、ユーザーは最適な焦点距離を保つための姿勢をとらざるをえません。定期的に体をさまざまに動かすことは、脊椎、筋肉、血液の循環にとって良いことだと分かっているのに、固定されたモニターでは、ユーザーの動きが著しく制限されてしまいます。

ローレンの場合のように、ユーザーに合わせてツールを調節できなければ、ユーザーがツールに合わせなければなりません。ユーザーの身体に大きな負担となり、企業の損益にも関わってきます。画面までの適切な視距離を保とうとして、肩を丸めて首を伸ばさなければならなくなり、その姿勢を長時間続けていると、背骨に歪みが生じます。さらにその姿勢を毎日続けていくと、腰痛を引き起こします。腰痛は、労働生産性を低下させる 要因の第2位(第1位は頭痛)(注15)  であり、40~65歳の従業員の腰痛による企業の経済損失は、年間74億ドルにのぼると推定されています。(注16)

入力デバイスの設計上の問題もあります。多くのエルゴノミストは、一日を通してさまざまな入力デバイス(タッチスクリーン、キーボード、マウス)を使用することを推奨しています。入力デバイスを変えることで、反復運動過多損傷のリスクを軽減できるからです。タッチパネル対応のモニターにする場合、あるときは入力デバイス(タッチ入力)で、またあるときは出力デバイス(ディスプレイ)として使えるように、広範囲の位置調節ができなければなりません。

極めてシンプルなソリューション

この問題は比較的シンプルな方法で解決できます。モニターアームを導入すると幅広い調節が可能になります。一日を通して姿勢を自由に変えられ、見やすい適切な高さ、距離、角度になるようにモニターを調節することができるようになります。

シングルスクリーンの場合、「浮かして安定する」モニターが適しています。その一つが、ハーマンミラーのフロー モニターアームです。ダイナミックなモニターアームで、ほぼあらゆる角度に「止めて、そのままにすること」ができます。特許を取得した幾何学スプリング装置によって、指先で動かすことができます。モニターを好きな位置に動かして指を離すだけで固定されるため、ロックしたり締めたりする必要はありません。モニターをデスク表面近くにまで下げて、画面を天井に向けたり(タッチスクリーンとして使いやすくする)、立った姿勢の高さまで引き上げて、共同作業をしやすくしたりできます。2台のモニターを使用する場合には、フローモジュラーモニターアームがあります。1本の支柱でダイナミックにサポートし、座った姿勢から立った姿勢までモニターを広範囲に動かすことができます。

 

Profile view of a man in a Mirra 2 office chair viewing a monitor attached to an adjustable arm.

フローモニターアームは、ほぼあらゆる角度に「止めて、そのままにすること」ができます。特許を取得した幾何学スプリング装置によって、指先で動かすことができます。モニターを好きな位置に動かして指を離すだけで固定されるため、ロックしたり締めたりする必要はありません。

オーリンモニターアームも同じくダイナミックモニターアームです。テクノロジーの進化に伴い、デバイスはより軽量で小型化しています。オーリンモニターアームは、モニターやラップトップなどの超軽量デバイス(0~9kg)をサポートします。アームは動く範囲とチルト範囲が広く、後方に最大80度傾けることができ、タッチスクリーンのディスプレイにも適しています。ユーザーが座っている状態でも立っている状態でも、遠近両用メガネをかけているか、左右の視力が1.0かどうかに関わらず、モニターをユーザーに合わせて、快適な位置に動かすことができます。

Illustration of a man in profile, showing an adjustable monitor arm in two positions to accommodate two seated postures.

オーリンモニターアームは、動く範囲とチルト範囲が広いため、視力や姿勢に関係なく、幅広いユーザーを快適にサポートします。

オーリンモニターアームは、サムホイール式の調節機能が組み込まれており、アームを工具なしで調節できます。さまざまな重さのスクリーンに対応するソリューションです。コンピューターを使用するワーカーの48~80%が経験しているとされる筋骨格系障害のリスク(注17)を避けるには、使いやすさが重要です。調節が難しければ難しいほど、わざわざ時間を割いて調節しようとしなくなってしまします。

フリーアドレスへの移行は増えていくと予想されます。ハーマンミラーの経験では、ローレンと同じような状況のユーザーが、場所によって、日によって、あるいはその時々で、ワークステーションを自分の作業に合わせてパーソナライズできれば、移行は成功します。モニターアームの調節機能は、パーソナライゼーションの一つにすぎませんが、極めて実用的です。モニターアームの導入は簡単で、費用対効果が高く、社員の健康にも関わってくるのです。

注記

1.Bill Browning “How a well-placed plant can save your office money,” Federal News Radio, https://federalnewsradio.com/commentary/2015/07/well-placed-plant-can-save-office-money/, 2015年7月14日。

2.ハーマンミラー、機密および独自調査、2014年。

3.ハーマンミラー、機密および独自調査、2016年。

4.CBRE, “Japan Major Report: Winds of Change,” http://www.cbre.com.hk/EN/aboutus/mediacentre/mediaarchives/Pages/Office-Occupiers-Opt-for-Activity-based-Workspace-Design-to-%27Future-proof%27-Portfolios.aspx, 2017年10月。

5.The CBRE Institute, “Occupier Survey Report of the Americas, 2017,” https://www.cbre.com/research-and-reports/Americas-Occupier-Survey-Report-2017, p. 20。

6.The CBRE Institute, “Occupier Survey Report of the Americas, 2017,” http://cbre.vo.llnwd.net/grgservices/secure/2017%20AMERICAS_Occupier_Survey.pdf?e=1501164856&h=0c8015f8ca76c52b87166da69ba556a2, p. 6.ハーマンミラー、“The Ws of Work,” 2011年9月。

7.ハーマンミラー、“The Ws of Work,” 2011年9月。

8.Gretchen Reynolds, “Get Up and Move.It May Make You Happier,” New York Times, https://www.nytimes.com/2017/01/25/well/move/get-up-and-move-it-may-make-you-happier.html?_r=0, 2017年1月25日。

9.Gretchen Reynolds “A 2-Minute Walk May Counter the Harms of Sitting,” New York Times, https://well.blogs.nytimes.com/2015/05/13/a-2-minute-walk-may-counter-the-harms-of-sitting/, 2015年5月13日。

10.“Exercise at Work Boosts Productivity,” Science Daily, https://www.sciencedaily.com/releases/2011/09/110906121011.htm, 2011年9月8日。

11.M. Y. C. Lin and J. T. Dennerlein “A Psychophysical Protocol to Provide Ergonomic Recommendations for Standing Computer Workstation Setup,” Proceedings of the Human Factors and Ergonomics Society Annual Meeting, http://doi.org/10.1177/0018720816639788, 2015年。

12.W. Jaschinsi-Kruza, “Eyestrain in VDU users: Viewing distances and the resting position of ocular muscles,” Human Factors, pp. 69-83, 1991年2月。

13.W. Jaschinsi-Kruza, “Eyestrain in VDU users: Viewing distances and the resting position of ocular muscles,” Human Factors, pp. 69-83, 1991年2月。

14. Ibid。

15.Walter F. Stewart, Judith A. Ricci, Elsbeth Chee, David Morganstein, Richard Lipton “Lost Productive Time and Cost Due to Common Pain Conditions in the U.S. Workforce,” JAMA, https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/197628, 2003年。

16. Ibid。

17.M. M Robertson, Y. H. Huang, M. J. O’Neill, and L. M. Schleifer, “Flexible workspace design and ergonomics training: Impacts on the psychosocial work environment, musculoskeletal health, and work effectiveness among knowledge workers,” Applied Ergonomics, 39(4), 482–494, 2008年。