カラーの解説

アレキサンダー・ジラードの孫であるアレイシャル・ジラード・マクソンとコーリー・ジラードが、家族に受け継がれる創造力について語ります。


作者: Sam Grawe

アートワーク: Daici Ano

WHY Magazine - Color Commentary

2015年の東京デザインウィークでの同時開催展で、アレキサンダー・ジラードの遺業が、その作品と魂を通して、息を吹き返しました。ハーマンミラーストア東京では、「アレキサンダー・ジラード展:彼の独創的なビジョンが生み出した世界」展の一環として、コンテンポラリーな家具、テキスタイル、商品と並んでアーカイブから作品が展示されました。一方、Curator’s Cubeギャラリーでは、「Girard Continued」展で、アレキサンダーの息子であるマーシャル・ジラードと、その子供達のアレイシャルとコーリーによるコンテンポラリーな作品が紹介されました。これらのイベントを受けて、私たちは、祖父アレキサンダーの根強い人気と、Girard Studioとして祖父の遺業と共に働くことについてのあれこれ、そして彼ら自身の創作活動についてアレイシャルとコーリーにインタビューしました。 

Archival work from Girard's 1967 furniture group as well as new furnishings.

ハーマンミラーストア東京の展示会では、1967年の家具シリーズからの珍しい2人掛けソファを含む、ジラードのアーカイブ作品と新しい作品を紹介しました。

東京にようこそ。なぜ、あなたのお祖父さんの作品は、近年、ここ日本で絶大な人気を博していると思いますか?

アレイシャル・ジラード・マクソン:私の知っている限り、日本は常に私たちの祖父の作品を受け入れてくれています。推測ですが、図柄になじみがあり、日常生活において図柄や色を尊重する意識があるのだと思います。郷土芸術やテキスタイルの歴史が豊かかどうかに関わらず、日本人は色や模様に対して臆することがないように思えます。また、祖父の作品は、単純さと普遍性を高く評価する人達をも惹きつけるのだと思います。

コーリー・ジラード:日本人は他の文化に非常に興味を持っていて、非常に高いレベルの鑑識眼があると思います。それは、私たちの祖父が世界に対して持っていた鑑識眼、そして文化ごとに異なる表現を完全に理解する祖父の審美眼に非常に良く似ているのだと思います。

私が今まで訪ねた場所の中で一番、日本はグラフィックを尊重しています。洗練されていると同時に、ちょっと風変わりなグラフィックをね。その微妙な境界線に乗るのが苦手な人もいますが、私達の祖父はそれが本当に上手だったと思います。

A custom Eames Lounge Chair upholstered with Maharam Minicheck; plastic and fiberglass Eames shell chairs in colorful Checkers.

新作の家具とカスタマイズされたマハラムミニチェックのファブリック張りのイームズラウンジチェア、そしてカラフルなテキスタイル<チェッカー>を張ったプラスチックとファイバーグラス製のイームズシェルチェア。

二人とも、今回の展示会に展示されているたくさんの作品に囲れて育ったか、もしくは長年かけてそれらに触れてきたと思いますが、このような環境ですべての作品を一挙に見てどのように感じますか?

アレイシャル・ジラード・マクソン:私たちの家や私たちの両親、祖父母の家には、祖父の作品と、工芸家からコンテンポラリーデザイナーまで、他の誰かの作品が常に一緒に飾られていました。そしてここでこのように完全に囲まれて、すべての作品が調和しているのを見るのは素晴らしいことですね。すべての作品に一貫して共通の特徴があるのがはっきりと分かります。一つの作品が別の作品を特徴づけているのが実によく分かります。また、新しい作品を鑑賞するのも楽しいことです。そして誰かが暮らしの中に取り入れてくれると思うと嬉しいですね。

Girard-designed textile samples and marketing materials from the Herman Miller Archives.

ハーマンミラーアーカイブよりジラードがデザインしたテキスタイルのサンプルとマーケティング資料の特別展示。

振り返ってみて、お祖父さんの仕事について何に一番感心しますか?

コーリー・ジラード:私が一番感心したのは、仕事における誠実さと自信です。また、祖父の作品は非常にダイナミックでありながら、そこにエゴが感じられません。それを成し遂げるのは難しいことです。祖父の作品を見ると、彼が創作活動を愛していたのは明らかです。自分自身の創作からインスピレーションを受けている人が発するメッセージ以上のものが他にあるでしょうか?

Girard Studioでのあなたの正式な立場は、お祖父さんの遺業を管理、保護することですが、別の角度から見ると、彼の作品やデザインに対する見解について現代との関係性を探索して、定義することだと思います。ご自分の役目をどのようにお考えですか?

コーリー・ジラード:ぴったりの表現としては、保管者、保護者、そして管財人といったところでしょうか。作品自体が雄弁に物語ってくれるので、一生懸命に関連性を見つけようとする必要はありません。非常に繊細でニュートラルなものから大胆で鮮やかなカラーまで、そしてソフトなものから挑戦的なテクスチャーのものまで、祖父のデザインは幅広いものでした。なので常に何かしらと組み合わせることができます。私たちにとってそれは、ただ意味のない物を作るのではなく、作品が持つ学びの概念に関心がある適切なパートナーを探すことなのです。作品に耳を傾け、そして自分自身にも問いかけるのです。「祖父ならどうしていた?」と。または「祖父が今も生きていたら、これに興味を持つ?」とね。それが私たちの指標なのです。

Selected work related to the 1961 Textiles & Objects shop Girard created for Herman Miller.

ストアの入口近くのショーケースには、ハーマンミラーのためにジラードが作成した1961年のTextiles & Objectsショップ関連から抜粋された作品が展示されました。右側の陶磁器は、アレキサンダーの弟のジャンカルロ・トゥンシ・ジラードのデザインです。

作業プロセスについて少し説明してくれますか?

アレイシャル・ジラード・マクソン:私たちが常に考慮していることの一つに、共に働く人々の作業工程を理解することがあります。環境への影響そして耐久性のある永続的な作品を作成する可能性があるかどうかをさらに理解するためです。なぜならそれが祖父の関心事でもあったからです。私たちは父と母にも相談して、作品が作られた背景について考え、そしてその作品をアーカイブ的に再び発表するのがいいのか、またはもっとコンテンポラリーな方法で作品を利用した方がいいのかを考えます。コーリーが言ったように、私たちは、手当たり次第にグラフィックや図柄をただ貼り付けて、何百もの「テーマをもった」商品として販売する気はまったくないのです。

Eames Molded Plastic Side Chairs upholstered in Maharam Checkers.

マハラムチェッカーのファブリック張りのイームズプラスチックシェルサイドチェアは、この展覧会のために特別に作成されました。

“重要なことは、自分達の行動を大切に考えている人や企業とパートナーを組むことです。そうすることで正しい方法でストーリーを語ることができるのです。”

-コーリー・ジラード

あなたにとって信頼とはどういう意味を持ちますか?

コーリー・ジラード:重要なことは、自分達の行動を大切に考えている人や企業とパートナーを組むことです。そうすることで正しい方法でストーリーを語ることができるのです。つまり、当然私たちにとって、それはハーマンミラーと協力することなのです。ハーマンミラーは、私たちの祖父にたくさんの機会、そして今こうして見ているたくさんの作品を作り出す原動力を与えてくれました。従って私にとって信頼とは、価値を尊重して、遺産を重んじることなのです。

アレイシャル・ジラード・マクソン:私もそう思います。でも私たちは信頼は2つの部分からなると思っています。1つは技術です。現代の方法や素材を用いることで改良される場合を除いて、オリジナルデザインを変更したり妥協することなく、製品が最初に製作されたやり方をきちんと守ることです。2つ目は精神です。作品が最初に創作されたときの精神を尊重することです。もちろん、その作品に込められているすべてのアイデアについて、祖父ならこうした、こうしなかったと祖父の代弁をすることはできません。でも、祖父の暮らしぶり、そして作品に対する考え方について、私たちはよく理解していると思います。

Girard's work included furniture, graphics, textiles, and interior design.

家具、グラフィック、テキスタイル、インテリアデザインなど、ハーマンミラーと共同で行ったジラードの作品。

それでは、あなたたちのお父さん、そしてあなた達へと受け継がれた、お祖父さんの精神について教えてください。

アレイシャル・ジラード・マクソン:一つは自由にアイデアを探るところです。私はとても気に入っています。創造力に火がついたら、祖父を止められる物はありませんでした。解決策を探ろうと最適なツールを探して、組み立てに必要な物を考え、作品の製作を手伝ってくれる人が誰かを考えては、のめり込んでいました。私たちの父親も、非常に良く似ています。子どもの時は本当に凄かったです。学校でのプロジェクトや例えばハロウィーンのコスチュームなど、アイデアが必要な時は父がアイデアを持っていようがいまいがに関わらずエンジンがかかり、私たちは作業場に行き、あれこれと取り掛かって完成させるのです。例え失敗に終わったとしても咎められることなく、プロセスを楽しむために、気兼ねせずに試すことができたので、本当に独特で素晴らしいことでした。

コーリー・ジラード:私もそう思います。絶え間ない好奇心と絶え間なく実験を試みる精神です。そして部品やアイデアが一つひとつ孤立して存在しているのではなく、暮らしであり、暮らしの営みを作り出す環境とのやり取りだという事を自覚するのです。

また、私にとっては、絵でもあります。私たちが小さかった時を振り返ると、自由な時間があるときは、絵を描くように勧められました。絵を描くことをアクティビティとして見ると、それは本当はアイデアをひねり出すことであり、頭の中にあることを描くことであるのが分かります。

お二人のお祖母さんやお母さんから受け継いだものについても尋ねなくてはいけませんね。

アレイシャル・ジラード・マクソン:私たちの母は祖母に良く似ています。でも祖母は母の実の母ではなく、血のつながらない義母であったのですから、面白いですよね。二人とも、自由奔放な創造性に歯止めをかけ、バランスを取る現実的な一面をもたらしてくれました。のめり込んでいる時に、現実に引き戻してくれるのです。

Art by Aleishall Girard Maxon, Kori Girard, and Marshall Girard at Curator’s Cube.

Curator’s Cubeに同時展示されたアレイシャル・ジラード・マクソン、コーリー・ジラード、二人の父親マーシャル・ジラードの作品。

Curator’s Cubeでの「Girard Continued」展について少し教えてください。

アレイシャル・ジラード・マクソン:コーリー、私、そして父はいつも、異なる分野で作品を作っています。そして多くの場合、互いの作品にインスピレーションや影響を受けているのです。何に取り組んでいるのか、何を創作しているのか、または創作についてどう思っているのかについてよく話し合うので、日本でこうして一緒に展示できるのは素晴らしい機会でした。また私たち全員がこの展示会のために新しい作品も作りました。

私個人のことですが、かなり長い間使い続けてきた素材を使用して、素材の新たな可能性を探りながら、自分の作品をさまざまな規模に展開しようとしています。

コーリー・ジラード:私にとってこの展示会は、アートショーのようなものに参加したことがほとんど無かった父と一緒に取り込むことができた極めて重要なイベントでした。このような展示会を開催できたことは非情に光栄で栄誉なことであり、反応は信じられないほどに暖かいものでした。

“コーリー、私、そして父はいつも、異なる分野で作品を作っています。そして多くの場合、互いの作品にインスピレーションや影響を受けているのです。”

- アレイシャル・ジラード・マクソン

Art by Aleishall Girard Maxon, Kori Girard, and their father Marshall Girard.

左上から時計回り:マーシャルによるリサイクルのアルミ缶をまとった木彫りのヘビ。アレイシャルによる糸を織り込んだタッセル。マーシャルによる彫刻の目。コーリーによる絵。 

創造的なプロセスにどのようにアプローチしますか?

コーリー・ジラード:私は、ずっとそれが何かを探るために取り組んできました。私のプロセスは、長い間多面的でした。できる限り創作し、できるだけ多くの媒体を試し、他のアーティストと協力することで、学び、探検してきました。最近になって、アレイシャルと私が祖父の遺産を管理するという大きな責任を負うことになり、私たちは、その任務の最も重要な点が、適切なパートナー、心から信頼できる人達と手を組むことだと気づいたのです。この機会に、私たちは自由になり、自分たち自身とその作品に再び集中することができ、前進し続けるようになりました。

アレイシャル・ジラード・マクソン:付け加えると、よく私たちは自身の作品を作ることと、祖父の作品を取り扱うことについて聞かれます。もし祖父が今でも生きていたら、過去の祖父の作品のみに集中するあまり、私たち自身の創造エネルギーと欲望に支障が生じるようなことは、祖父は望まなかったであろうと二人ともはっきりと理解しています。

そうは言っても、私個人にとっては、祖父の作品を手に取り調べるために時間を費やすことは、本当に刺激を与えてくれます。影響を受けるのです。テキスタイルを直接見て、その配色自体を元にネックレスを作ることはしませんが、でも常にインスピレーションを与えてくれることは確かです。

この展示会に来てくれた人にどのように感じて欲しいですか?

アレイシャル・ジラード・マクソン:自分達の生活にインスピレーションを感じて欲しいです。もっとカラフルで、たくさんの質感と一緒に暮らしたいと思ってくれたらいいですね。作品に一貫して流れる共通の特徴に気づくかどうかは分かりませんが、何らかの形で吸収してくれていると思います。

コーリー・ジラード:作品が好奇心と探求心をかき立てて、自分自身と自分がワクワクすることに興味を持ってくれるようになって欲しいです。自分の周りのことに興味があるなんて、これ以上に素晴らしい暮らし方はないでしょう?